二分脊椎症の発生率が、欧米諸国では低下しているにも関わらず、日本ではここ25年間で2倍に増えていることをご存じでしょうか。
我が国で二分脊椎症が増加しているのは、食生活の欧米化が原因といわれています。二分脊椎症と葉酸摂取との関係は明らかになっており、野菜を多くとる日本人には二分脊椎症が少なかったのです。
近年の発症率の増加に伴い、2000年に厚生労働省から「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関わる適切な情報提供の推進について」という通知が出されています。
その中で、妊娠を計画する女性は、妊娠4 週前から妊娠12 週まで葉酸サプリメント400μg/日を内服するよう勧告されています。しかし、葉酸サプリメントの内服率は低率であり、二分脊椎症の発生率は全く減少していないのが現状です。
ところで、二分脊椎症とはどんな病気なのでしょうか。
妊娠4~5週、神経管が閉鎖して脊椎や脳が形成されていく過程がうまくいかないと神経管閉鎖障害が起こります。
神経管閉鎖障害には、二分脊椎症のほかに無脳症や脳瘤もあります。
<二分脊椎症>
歩行障害、脊柱側弯・後弯、尿失禁、大便失禁、髄膜炎、水頭症、無呼吸発作、喘鳴、嚥下障害、性機能障害、軽度から中程度の知能障害など、多くの症状があり、一生治療とリハビリが必要な病気
<無脳症>
脳の大部分が形成されないため生後数時間で死亡することが多く、その予後の悪さから診断された場合は中絶を選択されることが多い。
神経管閉鎖障害の原因は、葉酸摂取量不足以外にも、環境因子(糖尿病、肥満、てんかん薬の内服、妊娠初期の高熱、放射線被ばく、ビタミンAの過剰摂取)、遺伝的因子があります。
妊娠前から葉酸サプリメントを充分に内服すると、発生リスクを低減することができます。
米国など40 数カ国では、穀類に葉酸の添加が義務化され、添加後の発生率が50%前後減少したと報告されています。
日本では食品への添加に賛同が得られていませんので、葉酸サプリメントの内服により、二分脊椎症の発生率を低下させることが大切です。
現在、市販のサプリメントには多くの種類があります。
<サプリメントを選択する際の注意点>
・1日400㎍を摂取できる
・1日摂取上限量1000㎍を超えない
・天然葉酸(食事性葉酸:別名ポリグルタミン酸型葉酸)より、吸収率がいい合成葉酸(別名:モノグルタミン酸型葉酸)を選択する。
・葉酸以外にもビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンCなども含まれているものを選択する。
・ビタミンAは体内に蓄積して過剰摂取になるリスクがあるので、含まれないものがよい。
妊娠を希望されている方は1日400㎍をサプリメントで摂取することが推奨されます。
妊娠前4週から毎日摂取しましょう。